「空色勾玉」カバーイラストのこれまで
福武書店 1988年 単行本
私のデビュー作の『空色勾玉』です。
装画は、絵本作家いとうひろしさん。「先輩だから、描いてあげる」とみずから買って出てくださいました。早稲田大学児童文学研究会の先輩で、数年先にデビューされていたのです。いとうさんが「勾玉のフォルムは様々あるから、描くのに困る」と、こぼしていたのを覚えています。

徳間書店 1996年 単行本
福武書店(現ベネッセホールディングス)が、児童書・文芸の出版から撤退することになり、一時はこれで消える覚悟をしました。けれども、徳間書店へ移籍した担当編集氏が、あらたに児童書部門を立ち上げたことから、再出版がかないました。
カバーは同じくいとうひろしさん。一転して現代アートの不思議さです。勾玉というより、オカリナとか胞子とか? いとうさんにとっての「ふぁんたじい」なのかも。

トクマノベルズ 2005年 ノベルズ版
このころは『西の善き魔女』(中央公論新社・現在は角川文庫版で刊行)も、ノベルズ版で出していました。
佐竹美保さんには、先に『これは王国のかぎ』(初版は理論社・佐竹さんのカバーは中央公論新社版・現在は角川文庫版で刊行)で、すばらしいカバー絵をいただき、手ばなしで喜んだものです。
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著『九年目の魔法』(創元推理文庫)を見つけたときから、私がそのカバーイラストにずっと憧れていたかたでした。

徳間文庫 2010年 文庫版
徳間文庫に本作を入れるにあたり、編集部でいろいろな検討があったのですが(児童書とかけ離れた読者層のため)、思案のすえフォト仕立てのカバーになりました。
私はこのきれいなフォトもなかなか気に入っています。書店の棚の場ちがいを懸念したわりには版を重ねることもできました。

こうした変遷の上での、今月8日発売予定の文庫新装版でした。
多くのかたに貴重な支援をいただいたこと、読者のかたに支持をいただいたことを、本当にありがたく思っています。
